よくある質問

「相続の料金はいくらですか?」

 

 率直に言って、非常にお答えしにくい質問です。特に電話では即答できません。

 相続の手続きでは次のような【要素】によって料金・費用(報酬を含む)が大きく異なります。また、これらの【要素】はケースごとに千差万別のため、「一般的な相続の料金」というのはありません。

 

【要素1】不動産の価格・個数

 不動産の価格によって相続手続きの料金は大きく異なります。特に異なるのが登記にかかる登録免許税という税金です。相続による所有権移転登記では、登録免許税は単純に「不動産の価格×0.4%」で計算します。したがって、登録免許税は不動産の価格に比例して高くなる、つまり、不動産の価格が倍であれば登録免許税も倍、3倍であれば3倍ということになります。これでは不動産の価格を知る前に、うかつに料金をお答えできないのです。

 「相続したのは山奥の山林なのでほとんど価値はゼロです。」このように説明なさる方もいます。しかし、ほとんど価値ゼロの山林でもそれが100筆も200筆もあったら、やはり料金はかなり高くなってしまいます。不動産の個数も料金に影響します。

 

【要素2】被相続人は誰ですか?相続人の数

 「相続の対象は父の所有していた自宅の土地建物だけです。」この前提で手続きを始めたら、実は土地建物は父の名義ではなく父の祖父の名義だったということもよくあります。「まさか!『よくある』なんてことはないでしょう。」とお思いになるでしょうか?しかし、これは「司法書士あるある」というべき事件で、本当に「よくある」ことです。

 父が死亡して相続人は妻と子2人だけと思っていたのが、父のいとこ、そのまた子にまで相続人の範囲が拡がってしまった――このような事態になると、料金も大きく変わってきます。一般的に、相続人の数が増えれば、取得すべき書類や作成する書類の数も増え、料金は高くなります。また、あまり相続人の範囲が拡がると、次に説明する【要素3】の問題も生じることが多いです。

 

【要素3】遺産分割協議は成立可能ですか?

 複数の相続人がいる場合、相続の手続きを行うためには遺産分割協議を必要とすることがほとんどです。遺産分割協議とは「遺産をどう分けるのかの話し合い」のこと。相続人間の関係が悪かったり、すでに遺産争いが起こっていたりする場合には、遺産分割協議を成立させることができないことがあります。この場合、家庭裁判所で遺産分割調停手続きを行ったり、そのために弁護士への委任が必要だったりと、料金の算定はかなり困難になります。

 また、数代前にさかのぼって相続手続きを行う場合など、相続人の数が多いときには、そもそも話し合いにこぎ着けられないこともあります。この場合も通常の手続きでは解決が困難であり、したがって料金の算定も難しくなります。

 

【要素4】求めている相続手続きは不動産だけですか?

 司法書士に持ち込まれる相続手続きは不動産登記(相続を原因とする所有権移転登記)を中心とするものが多いですが、最近では預貯金や株式など金融資産の相続および遺産分割手続きを合わせて依頼したいという方も多くいます。この場合、金融資産の金額、金融機関の数などによって料金も大きく異なります。さらに、死亡保険金や被相続人が勤務していた会社への死亡退職金の請求も頼みたいと希望する方がいますので、その場合にはまた料金が変わります。

 

【要素5】遺言書はありますか?

 一般的には遺言書のある方が相続手続きはスムーズに行きます。しかし、自筆証書遺言では検認の手続きが必要であり、遺言執行者の選任手続きが必要なこともあります。また自筆証書遺言では、遺言書の形式的な不備または内容的な不足等によって遺言書を使用することができず、結局、遺産分割協議を行わなければならない場合もあります。遺言公正証書でも、指定された遺言執行者が死亡しているなどの理由で、別途遺言執行者選任の手続きを取らなければならないことがあります。

 このように遺言書がある場合でもケースによって費用は異なり、実際に遺言書を見て、その内容を検討してからでなければ料金の算定は難しいです。

 

 以上、ざっと挙げただけでもこれだけの【要素】があり、相続手続きの料金に大きく影響してきます。電話で「料金はいくらですか?」と聞かれても即答できないのは、ご理解頂けるものと思います。

 

 それでも電話口で「ホントーにざっくり、だいたいでいいから料金を教えて欲しい!」と食い下がる方も、ときどきいらっしゃいます。「だいたいでいいなら10万円から100万円くらい」とお答えしたいところですが、そのようか回答では怒られてしまうでしょう。

 そこで上記【要素】を聴き取って「だいたいの料金」をお伝えすることもあるのですが・・・司法書士の習性として、少々高めに見積もってお答えします。すると「あの事務所は高い」と言われる。逆に安めに見積もった場合、実際の請求額が見積額を超えると「○○円と言ったのに!」とクレームがつく。こういう事態になるので、お答えしたくないのが本音です。

  

 「ネットでは定額制○○円という司法書士事務所もあるじゃないか?」このようにおっしゃる方もいます。でも、そのHPをよーく読んでみてください。小さい字で条件が細かく指定してあるはずです。条件から外れたら、その料金ではないのです。そして、様々な【要素】によって条件から外れる相続手続きが多いのは、上記で説明したとおりです。

 

 

スマートな解決方法

 

 でも料金・費用を事前に知りたい――それは当然のことと思います。

 

 そのためには何よりも資料を持って相談に来て頂くことです。これがスマートな、そして唯一の解決方法です。

 資料とは、被相続人の固定資産税課税通知書(なければ評価通知書または評価証明書)、権利証など不動産資料、被相続人の戸籍謄本・住民票除票、相続人の戸籍謄本、預貯金等の通帳などです。全部そろっていなくても構いません。相談後に取得して頂くことも可能ですので、お手元の資料を持ってお越しください。

 お越しいただき、資料を確認し、十分にお話を聴いた後でなら料金の概算(ケースによっては正確な金額)をお伝えすることは可能です。

 

 相談をしたからといって必ず依頼しなければならない訳ではありません。相談の結果、見積もられた料金が「高い」とお考えになるのであれば、断って頂いても結構です。

 

 当事務所では初回の相談は無料です。相談にお越しになる際には必ず予約をお願いいたします。